新宿区の民泊3,928件に規制強化案!住居系地域は原則新設禁止、旅館業も見直しへ【新宿区議】


こんにちは。新宿区議会議員の青木仁美です。

新宿区は令和8年9月8日、民泊(住宅宿泊事業)と旅館業の規制強化に向けて条例を改正する方針を発表しました。住居系の用途地域では民泊の新設を原則禁止する、という大きな内容です。今回は、その案の中身と、これからの流れをお伝えします。


新宿区の民泊は3,928件、なぜ規制強化なのか

まず、現状の数字から見てみましょう。区が公表している民泊の届出住宅数は、令和8年8月末時点で3,928件です。ここ数年の推移は、次のとおりです。

時期 届出住宅数
令和4年度末 1,425件
令和5年度末 2,166件
令和6年度末 3,070件
令和7年度末(令和8年3月末) 3,749件
令和8年8月末 3,928件

3年半で2.7倍を超え、この5か月だけでも約180件増えています。令和8年3月末時点の内訳を見ると、家主が住んでいない「家主不在型」が93.5%、建物の種類では共同住宅が90.8%を占めています。マンションの一室が、住人のいない宿泊施設として使われているケースが大半、ということになります。

区は今回の発表で、「民泊の増加が地域の生活環境の悪化を招いています。区ではルールを守らない悪質な事業者に対する行政処分を行ってきましたが、区に寄せられる相談が絶えない状況です」と説明しています。記者会見での区長の説明によれば、区には年間1,300件を超える苦情が寄せられているとのことです。主な相談として挙げられているのは、次の4つです。

  • 夜中に宿泊者が騒いでいる
  • 宿泊者がごみ出しのルールを守らずにごみを捨てている
  • 路上駐車や宿泊者の路上滞留により通行が妨げられる
  • 開業前に説明会を開いてほしい

私が令和8年8月に行った防犯・治安アンケート(277名回答)でも、「民泊によるトラブル」を不安に感じる方は62.8%、ご自宅やご近所で実際にトラブルを経験した方は47.7%でした。身近な問題として実感されている方が多いのではないでしょうか。


民泊の新ルール案:住居系用途地域は原則新設禁止、商業系は年120日まで

今回の案の中心は、民泊を「どこで」「何日」営業できるかの見直しです。現在のルールと比べると、次のようになります。

用途地域 現在のルール 見直し案
住居専用地域 月曜正午〜金曜正午は営業不可(実質、週末のみ) 原則、新設禁止
住居地域(第一種・第二種) 年間180日まで(法律の原則どおり) 原則、新設禁止
商業系用途地域 年間180日まで(法律の原則どおり) 年間120日のみ営業可

記者会見での区長の説明では、住居専用地域と住居地域に加えて、準工業地域や文教地区も対象として考えているとのことでした。この範囲は、パブリックコメントを経て固まっていきます。

住居系用途地域には特例があり、家主が同居・居住している民泊に限って、春休み・夏休み・冬休みの期間に年間120日まで営業できるとされています。ただし区長は、実際に居住している実態があるかどうかなど、条件を付けていく考えを示しています。

それでは現状の民泊がどの用途地域にどれくらいあるかも見てみましょう。区の公表資料(令和8年3月末時点)では、住居専用地域が7.0%、住居地域が40.0%、商業系が41.8%です。現在の区の条例で営業日が制限されているのは住居専用地域だけですので、対象は民泊全体の7.0%にとどまっていました。記者会見では、住居系用途地域にある届出住宅は令和7年度末時点でおおむね2,100〜2,200件、全体の半分以上との説明がありました。案のとおりになれば、この半分以上で新設が原則できなくなり、商業系でも営業日数が絞られます。

営業の方法についても、対面でのチェックインと、周辺住民を対象とした説明会の実施が義務付けられる案です。区の説明では、新宿区では宿泊者が間違って別の住戸を訪ねてしまい、夜中にドアをたたいてしまうケースが非常に多く、営業者が自分でお客さまを施設まで案内する仕組みが必要だとのことです。現在は、届出の7日前までに書面で近隣にお知らせすることになっていますので、説明会の義務付けも一歩進んだ内容だと思います。

そしてもう一つ、非常に重要な点があります。それは、既存の民泊施設も対象になるということです。すでに新宿には多数の民泊があります。これから新設ができなくなったとしても、既存の施設が営業を続けられるのではまったく改善は望めません。2年間の経過措置がありますが、今ある民泊も新しいルールの対象になるというのはとても有効な対策だと思います。


旅館業にも新ルール案:200㎡程度が小規模の目安、フロント設置と従業員の常駐を義務付け

今回の案が民泊だけでなく旅館業にも及んでいることは、とても重要なポイントです。

民泊は、住宅を使って年間180日を上限に人を泊める事業で、区への届出で始められます。一方、旅館業は区の許可が必要ですが、営業日数の上限はなく、365日営業できます。民泊だけを厳しくすると、宿泊施設が旅館業の許可を取る形に流れて、住民の方から見れば何も変わらない、ということが起こりかねません。国も令和8年7月の通知で、民泊を規制するときは旅館業の施設も同様に規制して整合を取るよう自治体に求めています。

実は、この流れはすでに起きています。平成30年の旅館業法改正で最低客室数の要件がなくなり、1室や2室の小さな施設でも「旅館・ホテル営業」の許可が取れるようになりました。区が公表している営業中の旅館業施設690件(令和8年6月30日時点)を許可年で見ると、2024年が84件、2025年が104件、2026年は6月末までで59件と増えています。小さな物件が、民泊ではなく旅館として営業するケースが増えているのです。

旅館業についての見直し案は、次の4点です。

  • 小規模な施設の新設を禁止
  • フロントの設置と従業員の常駐を義務付け
  • 対面でのチェックインを義務付け
  • 周辺住民への説明を義務付け

「小規模」の線引きについては、現時点では検討中ですが、おおむね200㎡程度が一つの基準になるのではないかとのことです。小規模な旅館の新設を禁止する理由は、旅館業の施設は365日営業できるため、特に住宅地にできた場合の周辺への影響が大きいから、とのことです。

フロントと常駐についても補足します。新宿区の現在の条例でも、玄関帳場(フロント)などの確認設備を設け、営業従事者を常駐させることは定められています。ただ、国の基準ではカメラなどのICT設備を使ったチェックインが認められる方向で緩和が続いてきました。区の説明では、遠隔で対応する施設には管理者の常駐を義務付けているものの、そのルールが守られていないケースも見られるとのことです。今回の案は、人が対面で確認することを改めて求める内容と読めます。「常駐」が施設の中に人がいることを指すのかなど、具体的な中身はこの先のパブリックコメントや条例案で明らかになっていく見込みです。


規制強化だけでは違法民泊は防げない。届出のない民泊への対策も必要

ここまでお伝えした新しいルールは、区に届出をして営業している事業者に対するものです。届出をせずに営業している違法民泊には、そもそも届きません。

記者会見でも、記者の方から「真面目にやっている事業者が割を食い、悪質な事業者が違法民泊に戻るのではないか」という指摘がありました。区長からは、違反物件については従来どおり通報をいただきながら調査を行い、適切な監督機関に伝えていく、という答えでした。区長は、民泊の法律ができる前には海外の予約サイトに4,000件以上の違法営業物件が掲載されていた、とも説明しています。

違法民泊の苦情も年々増加しています。ルールを厳しくするほど、届出をせずに営業したほうが得になる、という逆の動きが出てくることも考えておかなければなりません。せっかく条例を改正しても、違法民泊が野放しでは、住環境は良くなりません。

通報を受けてから動く体制だけでなく、予約サイトへの掲載を防ぐ仕組みや、区が自ら実態を調べる体制の強化など、違法民泊への対策をセットで進めることが必要だと考えています。

区民のみなさまにお願いしたいこともあります。届出をしている民泊には、法律で標識の掲示が義務付けられています。また、届出住宅の一覧は区のホームページで毎月公表されています。ご近所で民泊らしい出入りがあるのに標識がない、一覧に載っていない、という場合は、区の窓口にお知らせください。その一件一件が、違法民泊をなくす力になります。


今後のスケジュール:令和8年10月パブリックコメント、令和9年6月施行予定

区が示しているスケジュールは、次のとおりです。

時期 内容
令和8年10月 パブリックコメント(区民の意見募集)
令和9年2月 区議会に条例の議案を提出
令和9年6月 条例の施行予定

パブリックコメントは、区民のみなさまが区に直接ご意見を届けられる機会です。民泊で困っている方はもちろん、事業者として運営されている方も、この案について思うところをぜひ区に伝えていただければと思います。募集の詳細は、区のホームページや広報でお知らせされる見込みです。

少し背景をお話しすると、これまで民泊の規制は、国のガイドラインによって「年間を通じた全面禁止は適切ではない」とされてきました。それが令和8年7月、国が方針を転換し、住宅地などで新規の民泊を禁止する、いわゆる「ゼロ日規制」を自治体の判断で行えるようにする通知を出しました。今回の区の案は、この国の動きを受けたものです。


区民の住環境のことを思えば、今回の規制強化の方針は歓迎すべきことだと思います。今後の住環境の改善に期待したいと考えています。

一方で、ルールは作って終わりではありません。常駐や対面チェックインが実際に守られているかをどう確認するのか、今ある施設や事業者にどのような経過措置を置くのか、そして違法民泊への対策をどう強めるのか。こうした制度の中身が、暮らしやすさを左右します。詳細については、今開催中の決算特別委員会でも確認してまいります。

お住まいの近くの民泊でお困りのことがあれば、区の窓口にご相談ください。ご意見・ご質問はお気軽にお寄せください。

(令和8年9月時点の情報です)


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